エアコンの効きが悪いと感じた時、クリーニングをしても改善されないなら、エアコン内の「冷媒ガス」が漏れていることが原因かもしれません。
エアコンを長期間使用していたり、取付工事の時にミスがあったりすると冷媒ガス漏れが起きることがあり、エアコン効率の低下に繋がってしまうのです。
もし冷媒ガスが漏れている状態で、そのまま放置しているとどうなるのでしょうか。
この記事ではエアコンの冷媒ガスが少なくなった時に出る影響や、自分で補充するための方法を解説します。正しい知識をつけて、快適な室内環境を維持しましょう。
目次
冷媒ガスとは?
冷媒ガスとは、部屋の中の空気を冷やしたり暖めたりするために、エアコンの室内機と室外機をつなぐ配管の中を循環している物質です。圧力の変化により液体になったり、気体になったりします。
気体から液体に変わる時に周囲に熱を放出します。逆に液体から気体に変わる時には周囲の熱を奪う性質があります。
「フロンガス」という名前なら聞き覚えがある方もいるのではないでしょうか。フロンガスは冷媒ガスの中でも代表的なものです。冷蔵庫やエアコンなどの冷媒として開発された化学物質ですが、オゾン層破壊による環境への影響から1980年代以降に世界中で使用を規制されました。現在は、より環境に優しい「新冷媒」が主流になっています。
冷媒ガスの役割
冷媒ガスは常温では気体ですが、圧縮すると液体になるため、圧力を変化させるだけで自在に状態を変化させることができます。エアコンはこの性質を利用して、熱を放出したり取り込んだりしています。
冷媒ガスが液体になったり気体になったりしながら配管の中を循環することで、冷房運転時に室内機から取り込んだ熱を室外機まで運びます。また暖房運転時には室外機から取り込んだ熱を室内に運んでいます。
冷媒ガスが漏れることもある
基本的には、冷媒ガスが配管から漏れることはありません。ただし、取り付け工事の際の業者の過失や、エアコンの経年劣化、取扱い時の不注意などで漏れてしまう可能性もあります。
冷媒ガスが漏れていると、配管の中を流れるガスがどんどん少なくなり、熱を運ぶ役割を果たせなくなります。その結果、エアコンの機能も低下し、冷房や暖房が効きにくくなってしまうのです。
エアコンの冷媒ガスが少なくなるとどうなる?
普段エアコンを使っていても、冷媒ガスを直接目にすることはありません。そのため冷媒ガスが漏れていても気がつかない場合がほとんどです。エアコンの冷媒ガスが漏れてしまうとどのような問題があるのかご紹介します。
エアコンの効きが悪くなる
エアコンの冷媒ガスが漏れていると、熱を取り込んだり放出したりする効率が落ちるため、エアコンの効きが悪くなります。さらに状態が悪化すると、冷媒ガスが不足して冷暖房が全く効かなくなることもあります。
冷房をかけているのに、送風口から風が出るのに全く涼しくならない、逆に暖房をつけても部屋が暖まらないという時は、エアコンの冷媒ガスが漏れている可能性も疑いましょう。
室外機や熱交換器に霜がつく
冷媒ガスが漏れていると、冷房運転時に室外機に繋がっている配管や熱交換器に霜がつくことがあります。
エアコンが正常に動作していても霜がつくことはありますが、数分で水滴に変われば問題ありません。冷媒ガスが漏れて不足している時には、霜が消えるどころか、どんどん厚くなっていきます。
逆に、冷房稼働時に配管が全く冷たくなっていない時には、完全にガスがなくなってしまっている可能性も考えられます。
エアコンに冷媒ガスを補充する必要はある?
通常であれば、冷媒ガスは漏れないように設計されているため補充は不要ですが、冷媒ガスが明らかに漏れてしまっている場合には、補充をしないとエアコンの効きが悪くなってしまいます。
冷媒ガスを補充する際には、必ず漏れている原因を特定し、処置をしてから補充しましょう。原因がわからないまま冷媒ガスを補充しても、再び漏れてしまうため効果がありません。
エアコンに冷媒ガスを補充する方法
エアコンの冷媒ガス漏れは、頻繁に起きることではないため対処方法がわからない方も多いのではないでしょうか。
修理業者などに依頼して冷媒ガスを補充してもらう人がほとんどですが、自分で補充することもできます。ここでは、エアコンに冷媒ガスを補充する方法を解説します。
用意するもの
冷媒ガスを補充する際に必要なものは以下の通りです。
- フルオロカーボンガス(冷媒ガス)
- 真空ポンプ
- チャージングスケール(ガスの補填量を計測する道具)
- ゲージマニホールド(真空状態になっているか確認する道具)
- チャージングホース(ガスを補填するための道具)
上記の道具を全て揃えるには、だいたい30,000〜50,000円以上かかります。滅多に使うものではないので、全て買い揃えるのはもったいないですよね。その場合、業者から器具を約5,000円程度でレンタルすることも可能です。
冷媒ガスを補充する手順
冷媒ガスを補充する手順をご紹介します。
- 各器具の取り付け
チャージングホースを使い、室外機、マニホールド、真空ポンプの順に繋ぎます。このとき、必ず室外機の低圧側のバルブに繋いでください。 - 真空引き
全ての器具を繋いだら、エアコン内の冷媒ガスを完全に抜くために真空状態を作りましょう。
室外機のバルブが開いた状態で真空ポンプの電源を入れ、10〜15分程度稼働させます。マニホールドのゲージ圧が-0.1MPa以下になったら、低圧側バルブを閉めてください。 - 機密試験
完全に真空状態になったか確認します。真空ポンプの電源を切った後、5分程度経過してもマニホールドのゲージ圧に変化がなければ確認完了です。
ゲージ圧に変化がある場合は、どこかでガス漏れしている可能性が高いので、冷媒ガスを補充しても再び漏れてしまいます。補充前に原因を調べて対処する必要があります。 - ガス補充
ガス漏れを解消し完全に真空状態になったら、冷媒ガスを補充していきましょう。チャージングスケールの上に冷媒ガスのボンベを乗せて、重量を0に設定します。①のマニホールドにガスボンベを繋いでバルブを開け、ガスを補充してください。補充を進めると、ガスボンベ内のガスが減ったぶんチャージングスケールの数値も減っていくので、数値をみながら規定量に達するまで補充を続けます。
冷媒ガスは、機種ごとに規定量が決められています。量が多すぎたり少なすぎたりすると、エアコンの効きが悪くなる、故障しやすくなる、電気料金が高くなるなどのリスクがあるため注意してください。 - バルブを閉める
マニホールド、ガスボンベの順にバルブを閉めます。最後に、室外機とガスボンベからチャージングホースを外して作業完了です。
全ての作業が終わったら、エアコンが正常に作動しているか確認しましょう。
エアコンに冷媒ガスを補充する際の注意点
冷媒ガスを自分で補充することは可能ですが、気をつけなければならないこともあります。間違った方法で補充してしまうと、エアコンが故障したり効きが悪くなったりするかもしれません。
自分で冷媒ガスを補充する際には、これから挙げる注意点を必ず守り、安全に作業を行いましょう。
冷媒ガスの種類を確認
冷媒ガスには様々な種類があります。ご家庭のエアコンに使われている冷媒ガスの種類は、室外機に貼られているシールや仕様書に記載されていることが多いです。必ずどの冷媒ガスが使われているかを確認して、同じ種類のものを用意してください。
間違った種類の冷媒ガスを補充してしまうと、エアコンの故障に繋がりかねません。
規定量を守る
冷媒ガスの量は、エアコンの機種によって異なります。量を間違えるとエアコンの効きが悪くなったり、故障したりする恐れがあるため、必ず規定量を守って補充しましょう。冷媒量も仕様書などに記載されています。
難しい作業はエアコンのプロに依頼
エアコンから冷媒ガスが漏れているかどうかを素人が判断するのは、エアコンの構造に詳しくないととても難しいです。冷媒ガス漏れが起きることはほとんどないため、エアコンの効きが悪いと感じた時には、まずはエアコンクリーニングをしてみましょう。
エアコンの内部をキレイにするだけで、エアコンの効きが改善することは少なくありません。エアコンの効きが悪くなった時は、エアコン内部に溜まった汚れや埃、カビなどが原因の可能性が高いからです。
また、エアコンの冷媒ガスを自分で補充するためには道具が必要で、一から揃えるとなるとかなり高額になってしまいます。道具を揃えても、作業が複雑な上に規定量をしっかりと計測して補充する必要があり、初心者には難しいのも現実です。
知識がないままに冷媒ガスの補充を行うと、エアコンが故障してしまうリスクもあるため、プロに頼むのが安心です。